あなたの愛車を売却する際、査定士とのやり取りの中で必ず話題になるのが「修復歴」の有無です。もし過去に大きな修理をした経験がある場合、「査定額が下がるから言わないでおこうかな...」という考えが一瞬頭をよぎるかもしれません。しかし、結論から言えば、修復歴を隠して売却することは絶対に避けるべきです。
これは単に査定額が下がるかどうかという金銭的な問題に留まらず、売却後に発覚した場合、売り主として非常に重い法的責任を負うことになるからです。
この記事では、車売却における修復歴の告知義務と、売却後にそれがバレた場合にどのようなリスクがあるのかを、1500文字程度で詳しく解説します。
1. そもそも「修復歴」とは?「修理歴」との決定的な違い
まず、修復歴の定義を正しく理解することが重要です。
- 修復歴:一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)や自動車公正取引協議会が定める基準で、「車体の骨格(フレーム)に当たる部位」を交換または修正した経歴のある車を指します。
- 骨格部位の例: フレーム(サイドメンバー)、クロスメンバー、ピラー、ルーフパネル、フロアパネル、ダッシュパネルなど。
- これらの部位は車の走行安定性や安全性を支える根幹であるため、修理・交換すると「修復歴あり」と認定され、査定額に大きく影響します。
- 修理歴:ドアやバンパー、フェンダーといった骨格以外の外装部品を交換・修理した履歴のこと。
- 単なる外装の傷や凹みの修理は、一般的に「修復歴」には当たりません(※ただし、事故の程度によっては査定に影響します)。
告知義務があるのは、この「修復歴」に該当するものです。
2. 修復歴を「言うべき」理由:法的な告知義務と「バレる」現実
なぜ修復歴を正直に伝えなければならないのでしょうか。それは、売り主には「告知義務」があるからです。
⚖️法的な告知義務:契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
民法改正(2020年4月施行)により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。
これは、売却した車が契約内容(修復歴なし、など)と異なっていた場合、売り主が責任を負うというものです。売買契約において、修復歴は契約の重要な要素とみなされます。
たとえ個人間でなく、買取業者に売却する場合でも、修復歴を隠していたことが後に発覚すれば、この契約不適合責任に基づき、損害賠償請求や契約解除の対象となります。
🔎隠しても「ほぼ確実にバレる」理由
「プロの査定士には隠せない」というのが現実です。買取業者の査定士は、修復歴を見抜くための専門的な訓練を受けています。
- 溶接痕のチェック:骨格部分の不自然な溶接痕やシーラー(接合部の防水材)の跡。
- ボルトの緩み/再塗装:交換された部品の取り付けボルトの塗装剥がれや、骨格部分の再塗装跡。
- パネルの歪み:走行中に現れるわずかな歪みや、ドアのチリ(隙間)のズレ。
彼らは特殊なライトやゲージを使って、車体の微細な変化を徹底的にチェックします。査定時に気づかれなくても、その後の流通プロセス(オークション出品や再販売前の点検)で必ずと言っていいほど発覚します。
3. 売却後に修復歴がバレたらどうなる?最悪のシナリオ
売却時に修復歴を意図的に隠し、後にそれが発覚した場合、売り主には以下のような重大なリスクが及びます。
① 契約解除と損害賠償請求
最も一般的なのは、買取業者から契約不適合を理由とした契約解除を求められることです。この場合、売却代金全額の返還を求められます。
さらに、業者が車を転売する際にかかった費用(輸送費、保管料、再査定費用など)や、修復歴車として売却せざるを得なくなったことによる損害分を、売り主に対して損害賠償として請求される可能性があります。
② 査定額の大幅な減額請求
契約解除に至らなくても、「修復歴が判明したため、契約時の査定額から〇十万円減額する」という事後減額請求が行われることがあります。
買取業者との信頼関係が崩れるため、交渉は著しく不利になり、不当に感じるような大幅な減額を飲まざるを得なくなるケースも少なくありません。
③ 悪質な場合は「詐欺罪」の可能性
極めて悪質だと判断されるケース(例えば、事故を隠すために大規模な偽装工作を行ったなど)では、詐欺罪として刑事責任を問われる可能性もゼロではありません。
🤝正直な申告こそが最善の策
修復歴の有無は、車の「履歴書」のようなものです。一時的な高額査定を狙って事実を隠しても、後から発覚すれば、金銭的な損失だけでなく、時間と労力、そして精神的な負担を負うことになります。
修復歴がある場合は、隠すことなく正直に申告することが、最終的に最もトラブルを避け、円滑に取引を完了させるための最善策です。修理した部位や時期などを正確に伝え、誠実に対応しましょう。