はじめに:高まるDIY需要と「自家塗装」の魅力
最近、YouTubeやSNSの影響もあり、愛車を自分好みの色に塗り替える「自家塗装(DIY塗装)」に挑戦する方が増えています。費用を抑えながら、世界に一台しかないオリジナルカラーの車に乗れるのは、非常に魅力的です。
しかし、車はいずれ手放す時が来ます。その際、オーナー様が必ず抱える疑問がこれです。
「自家塗装した車は、中古車として売れるのだろうか?」
結論から申し上げると、「売れます」。ただし、その「売却額」は、一般的な純正色の車に比べて、大きく左右される可能性があります。今回は、自家塗装車を売却する際の厳しい現実と、少しでも査定額を上げるために知っておくべきプロの戦略を、約2000文字で解説します。
🔍 結論:自家塗装車は「売れるが、評価は厳しい」
中古車買取市場において、自家塗装車がどのように評価されるかを解説します。
1. 買取店が自家塗装を嫌がる「決定的な理由」
買取業者が自家塗装車を敬遠するのは、以下のリスクがあるからです。
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① 再販時の需要の限定: 中古車市場では、大衆に受け入れられやすい「純正色(白、黒、シルバーなど)」が圧倒的に有利です。個性的なDIYカラーは、買い手が極端に限られ、在庫リスクが高まります。
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② 塗膜の品質と耐久性: プロが使用する塗料や設備(塗装ブースなど)と違い、DIY塗装では塗膜の耐久性や密着性が低いケースが多く、数年後に剥がれや色褪せが起こるリスクが高いです。
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③ 査定士の判断基準の欠如: 査定士は純正色の塗装品質をチェックすることに慣れています。DIY塗装の品質を正確に評価する基準がなく、「悪い方向に判断する」傾向があります。
2. 「査定額が下がる」二つの大きな要因
自家塗装が原因で査定額が下がる要因は主に二つです。
- 全塗装(オールペン)の場合:
純正色に戻すための「再塗装費用」が査定額から差し引かれる可能性が高いです。特に、元の色が濃い色で、上から明るい色に塗り替えている場合(例:黒 $\rightarrow$ 白)、ドアの内側やエンジンルームまで完璧に塗られていないと、減額の対象となります。
- 部分塗装や特殊塗料(例:ラバーペイント)の場合:
ラバーペイントなど剥がせる塗料は、剥がす手間賃が引かれることがあります。また、塗装境界の処理が雑だと、その補修費用が引かれます。
🎨 査定を少しでも上げるための【4つの戦略】
自家塗装した車でも、工夫次第で評価を改善し、買取額を引き上げることは可能です。
戦略1:最高の仕上がりを目指す(品質重視)
DIY塗装の場合でも、以下の点に徹底的にこだわることで、プロの目に耐えうる品質に近づけましょう。
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下地処理の徹底: 塗装前のパテ処理、研磨、シリコンオフ(脱脂)は時間をかけて丁寧に行い、塗料の密着性を高める。
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「ゆず肌」の排除: 塗装面のザラザラ感(ゆず肌)を極力抑え、クリアコートを十分に吹き付け、最後に磨き(ポリッシング)をかけて光沢を出す。
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内側の処理: ドアを開けた部分や、ボンネット裏の見える範囲だけでも、しっかり塗膜を処理する。
【プロの視点】 仕上がりが非常に綺麗で、純正と見間違えるレベルであれば、買取業者も「この色が好き」という特定層への販売を狙えるため、減額幅が小さくなります。
戦略2:純正パーツの有無を伝える
全塗装した場合でも、元の色を証明するための情報(元々の色番号など)や、カスタム前の純正パーツを保管している場合は、それを査定時に全て提示しましょう。
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純正状態に戻せる可能性を示すことで、買取業者は再販時の選択肢が増えると判断し、プラス評価につながる場合があります。
戦略3:塗料の種類と経緯を正直に伝える
査定士に「いつ、どのような塗料(ウレタン系か、ラッカー系かなど)を使って、どのように塗ったか」を正直に伝えましょう。
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隠さないこと: 隠そうとすると、後で必ず発覚し、不信感から大きく減額されます。
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ウレタン塗料を選ぶ: 剥がれやすく耐久性が低いラッカー塗料ではなく、耐久性が高い二液性ウレタン塗料を使用している場合は、その旨をアピールしましょう。
戦略4:「専門買取店」を利用する(販路の確保)
一般の中古車買取店ではなく、カスタムカー専門の買取店や、特定車種の専門店に査定を依頼することを強くおすすめします。
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理由: カスタム専門店は、DIY塗装であっても「個性」として評価してくれるバイヤーが多く、純正色へのこだわりが薄い顧客層を持っています。一般店では大幅減額でも、専門店では減額なし、あるいはプラス査定になる可能性すらあります。
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方法: 一括査定サイトを利用する際も、「カスタムカーに強い」と謳っている業者を選んで査定依頼をしましょう。
⚠️ 覚えておきたい「二重査定」のリスク
自家塗装車を売却する際、特に注意が必要なのが「二重査定」です。
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二重査定とは: 査定時には高額を提示しておきながら、車を引き渡した後で「塗膜の剥がれが確認された」「下地処理が不十分で再塗装が必要だ」などとして、買取額を大幅に減額してくる行為です。
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対策: 契約書に**「引き渡し後の減額規定」**をしっかりと確認し、可能であれば「引き渡し後の減額は認めない」という旨を明記してもらいましょう。また、査定時に目立つ剥がれや色ムラがないか、査定士と一緒に確認し、写真で記録を残しておきましょう。
📝 まとめ:自家塗装車を売却する心得
自家塗装車は、個性という付加価値がある一方で、品質というリスクも同時に抱えています。
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売却先はカスタム専門店を優先する。
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塗装の品質と耐久性を最大限に高めておく。
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契約時の「二重査定」リスクに細心の注意を払う。
「自分の手で愛車を塗り替えた」という経験は何物にも代えがたいものですが、手放す際はプロの査定を受ける前に、可能な限り**「純正品質」に近づける努力と、「リスクに見合った買取業者」**を選ぶことが、後悔しない売却の鍵となります。